奈良国立大学機構

 本機構の奈良カレッジズ交流テラスにて、「H2A」ロケットの打ち上げのライブビューイングを行いました(9/7)

 令和5年9月7日、本機構の奈良カレッジス交流テラスにて、大型ロケット「H2A」の47号機打ち上げのライブビューイングを行いました。
 H2Aロケット47号機は午前8時42分(日本時間)に鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられ、打ち上げから約14分後にX線天文衛星 XRISM(クリズム)、その約33分後には月探査機 SLIM(スリム)の軌道投入が成功しました。衛星の軌道投入が成功した瞬間、観覧していた学生・教職員からは歓声が上がりました。本事業に携わる、奈良教育大学の信川正順准教授が、打ち上げの状況をリアルタイムで解説する中、観覧者からは様々な質問が飛び交い、宇宙への思いを馳せる機会となりました。
 XRISM は現在、地球上空を高度約 600 km を周回しています。およそ3ヶ月かけて観測開始の準備を始める予定で、今後の様々な研究への展開が期待されます。
     
本機構において、H2Aロケット47号機の打ち上げに携わったのは、以下の教員です。
・信川正順(奈良教育大学 理科教育講座 准教授)
・山内茂雄(奈良女子大学 自然科学系物理学領域 教授)
・太田直美(奈良女子大学 自然科学系物理学領域 准教授)

本事業との関わりや研究内容について、インタビューをしましたので、以下に記事を掲載させていただきます。
(以下、敬称略)



(1)H2Aロケット47号機の打ち上げに、どのような研究を通じて携わっておられますか。
信川: ロケットに搭載するエックス線天文衛星 XRISM の開発に関わっています。具体的には、宇宙から来るエックス線を検出する装置である軟エックス線撮像装置 Xtend の開発を共同で行ってきました。また、衛星から地上に降りてきたデータを地上で処理するための地上データ処理システムの開発を共同で行っています。
山内: 私は観測装置開発には直接には寄与していなくて、衛星運用の準備作業へ参加しています。指導していた学生の中には軟エックス線撮像装置 Xtendの地上試験に加わった人もいます。なお、2018年5月には奈良女でチームミーティングを開催しました。
太田: X線天文衛星XRISMの主科学目標の一つである銀河団の観測計画に加え、観測機器の一つX線マイクロカロリメータResolveの性能モニターの開発などを担当しています。後者は研究室の大学院生にも活躍してもらっています。


(2)上記の質問と関連して、どれくらいの期間研究に携わっておられますか。
信川: XRISM の開発プロジェクトが立ち上がった 2017年から参画しています。宇宙エックス線を観測することによる天文学の研究は 2006年に大学院に進学してからこれまでずっと行っています。
山内: 私もXRISM衛星にはプロジェクトが立ち上がった時から参加しています。また、X線観測による研究に私自身は1987年から参画しています。
太田: XRISMプロジェクトには発足時から参加しています。銀河団の観測研究は大学院生のころから、X線マイクロカロリメータの較正実験や性能モニターに関係する研究はポスドク研究者になったころからです。


(3)研究の魅力を教えてください。  
信川: これまでにない新しい装置(宇宙望遠鏡)を自分で作り、誰も見たことがない未知の宇宙の現象や天体を発見することがこの研究の醍醐味です。
山内: 観測や考察によって自然に対するわたしたちの理解が深められることが研究の魅力だと思います。
太田: 宇宙最大の天体である銀河団がどのように生まれて今の姿に進化してきたのか、その鍵となる未知の暗黒物質の正体は何なのか。超高分解能の観測機器を使って銀河団中の高温ガスの動きを捉え、その手がかりを得ようと挑んでいるところです。


<XRISMに関する資料>
  ISAS/JAXA公式ホームページ
https://www.isas.jaxa.jp/missions/spacecraft/developing/xrism.html
    写真
コンピュータシミュレーションによる銀河団のX線画像。太陽の千兆倍の質量を持つ銀河団のなかに温度8千万度もの高温ガスが広がっている様子を示している。図の一辺は、約800万光年に相当。
    写真
予想されるX線放射のエネルギースペクトル
上図の白い四角で囲んだ領域をXRISM衛星搭載X線マイクロカロリメータで観測したとして計算したもの。横軸はX線のエネルギー (単位: キロ電子ボルト), 縦軸はX線の強度。6キロ電子ボルトあたりに鉄の輝線スペクトルのピークがあり、そのドップラー効果によるエネルギーのずれからガス運動のスピードを過去最高の精度で測定します。
(論文 Naomi Ota, Daisuke Nagai, & Erwin T. Lau, Publ. Astron. Soc. Japan 2018 より引用)


信川准教授に関する記事
https://www.nara-edu.ac.jp/assets/seeds/nobukawa.pdf

https://www.nara-edu.ac.jp/PRESS/ebook/book030.html

https://note.com/xrism/n/n2805b2f8c12d