写真 理事長 榊 裕之

文化勲章を受章して


榊 裕之



 この度、文化勲章を受章することになり、奈良国立大学機構の教職員と学生の皆さんに、以下のご挨拶を送らせて頂きます。
 半世紀余り前の学部学生時代に、興味を持ちながらも十分に理解できていないことが気になり、卒業研究のテーマとして、半導体を用いたMOS型トランジスタの研究に着手したのですが、その後、大学院での5年間と東京大学の教員として34年の間、半導体の奥深さと魅力に導かれ、この分野で探究を続けることになりました。幸い、恩師や同僚の貴重なご支援も頂き、大学院生や共同研究者の協力も得られたお蔭で、電子の量子的波動性に関する研究に打込むことができ、深く感謝しています。さらに、同じ分野で切磋琢磨し、半導体の科学技術と産業展開の発展に勤しんできた内外の研究者や技術者の方々から大いなる刺激や支援を頂くことができたため、電子工学と固体物理学と物質科学とが重なり合う学際領域の開拓にいくらかの貢献をすることができ、今回の受章に繋がることになりました。この体験から、学びと探究の場である大学は、学際的な相互啓発に適しており、多様な人材の育成と学術文化の醸成に大きく貢献できるとの確信を持つに至っています。 


 東京大学での43年間に続いて、独自性に富む豊田工業大学で15年間、教育研究および大学運営に携わり、今春からは奈良国立大学機構の運営に携わることになりましたが、奈良教育大学と奈良女子大学が、連携する諸組織の協力も得て、大学の連合体が持つ大きな可能性を開花させることができるよう、理事長としてできる限りの尽力をする積りです。本法人に連なる全ての教職員と学生の皆さまには、引き続き、ご理解とご協力をお願いいたします。